本棚の中の小宇宙

日々読んだ書籍をネタバレ全開で語るブログです

百舌鳥魔先生のアトリエ (角川ホラー文庫)  著者:小林 泰三

f:id:tkhshkoo:20180512174131j:plain

 

「あなた、百舌鳥魔先生は本当に凄いのよ!」妻が始めた習い事は、前例のない芸術らしい。言葉では説明できないので、とにかく見てほしいという。翌日、家に帰ると、妻がペットの熱帯魚を刺身にしてしまっていた。だが、魚は身を削がれたまま水槽の中を泳ぎ続けていたのだ!妻が崇める異様な“芸術”は、さらに過激になり…(表題作)。他に初期の名作と名高い「兆」も収録。生と死の境界をグロテスクに描き出す極彩色の7編!

 

ネタバレ注意

 

 

 

それではそれぞれの短編に対する感想を書いていきたいと思います。
「ショグゴス」
南極に正体不明の生物が2種類現れた。彼らに敵意はないが、近づくものを破壊していく。そんな彼らをどうするか語る政府の大統領と軍用ロボット研究所の主任研究員が語る形式で物語は進んでいく。
前提として「ショグゴス」がなにかわからないといまいちわからないのが難点である。
「ショグゴス」はクトゥルフの登場人物で簡単に言えば古の者たちのために作成された、生物である。これが人間とアンドロイドの関係と対になっていて大統領の皮肉や怒りが全部ブーメランになっていて非常に面白い
オススメ 1位

「首なし」
母が息子に語り掛けるような文体で進んでいく、父親はすでになく首だけが標本になっている。その前で語られる父と母の出会い
最初から最後まで完全におかしいお嬢様(母)の描写をなんてことなく書いているが冷静に考えるとほんとにおかしい、狂っている描写が相変わらず上手い

「兆」
 とある女子中学生が飛び降り自殺を行った、そんな彼女のクラスメートであった主人公の元に彼女の霊が現れるようになり・・・しかし、その幽霊は実態がある場合もあり
本当に幽霊なのか?それとも?
ホラー強めでかなり怖い、夜に窓を見れなくなります
これはあまり書くと面白くなくなるので割愛
オススメ 2位

「朱雀の池」
話の骨子はいいし面白くなりそうな設定もあるのに、短編故の欠点か描写が全く足りていない

「密やかな趣味」
人間そっくりのアンドロイドを作れるようになった時代、しかし人間そっくりのアンドロイドの目的は性的なものでしかなかった。ある時、広告を基に購入を決めた女性が主人公。彼女は購入したアンドロイドにアブノーマルな欲望をぶつけていく
文章だけでは彼女があんなことをしたのは本当の人間かアンドロイドなのかわからないような結末は最高でした
オススメ 3位

「試作品三号」
妖怪とバトルするダークファンタジーものホラーやミステリーではなくSF?です。
ただ戦闘描写があまり上手くない・・・いや淡白な表現の作者だし、それなりといった印象

「百舌鳥魔先生のアトリエ」
あらすじに書いている表題作。
これぞこの作者の真骨頂。どのように描写したら、読者が不快に感じるかを理解したうえで、丁寧に気持ち悪く描写しています。
ものすごくグロくて、グロ耐性がない方はよむのも苦労するような感じです。
出来はかなりいい