本棚の中の小宇宙

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【ネタバレ感想】女王はかえらない (宝島社文庫)

※ネタバレを含みます

 

 

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あらすじ

片田舎の小学校に、東京から美しい転校生・エリカがやってきた。
エリカは、クラスの“女王"として君臨していたマキの座を脅かすようになり、
クラスメイトたちを巻き込んで、教室内で激しい権力闘争を引き起こす。
スクール・カーストのパワーバランスは崩れ、物語は背筋も凍る、驚愕の展開に――。
伏線が張り巡らされた、少女たちの残酷で切実な学園ミステリー。

 

 

 

2重3重のどんでん返しで楽しませてくれる本作品

 それを効果的に演出したのが、子供たちがそれぞれを呼ぶときの「あだ名」である。

叙述トリックでは定番の主人公の性別をごまかす点にも使われたし、2部の時間軸の誤認への誘導にも使用された。

 

実際、私も「ぼく」=女の子は読めたが、むしろ読めてしまったがゆえに真希≠マキであり、実は「ぼく」なのではないかと勘ぐってしまった。

事実そんなことはなく真琴=「ぼく」であったのだが・・・

 

さて、苗字があだ名の元ネタでったキャラが多かったのだがこれはトリックのためでもあるが子どもであるが故のマウンティング方法でもあるのではないだろうか

子どもにとって苗字、すなわち家とは世界であり自身を構成する最も大きな要素でもある。

それを基にクラス(4-1)という別世界で生きていくための名をそれぞれが得たのは処世術であったかもしれないが、まるでそれは鎖のようでもあると感じる。

通常大人になっていくにつれて世界が広がり家や学校も一つの要素になるはずだが、彼らはあの事件によって4-1という一つの檻にとらわれてしまった。最後にみんなで行った同窓会も、またその檻への鎖を結びなおす儀式のようにも見えた。

 

タイトルのとおり女王はもう帰ってこない、しかしながら女王が帰らないことには4-1という王国、いや檻は決して消えないだろう。